再開発で消えゆく昭和遺産「横丁」

駅の近くの商業地域に建つ小学校。

数十年前に建てた時は、街が発展途上で、今のような高層建築もありませんでした。

 

古くなった校舎を建て替える時に、付近と一体に再開発される傾向があります。

小学校は、広い敷地の割には3階建て位が多く、商業地域だと土地の面積の500%くらいの床面積建物が建てられます。

ところが実際使っているのは200%だとしたら、300%分は余っていることになります。

 

この余った容積率を周りの建物が活用するのが「空中権」の売買です。

東京駅丸の内駅舎の余った容積率を近隣のビルに配分したときは、18万㎡分の余りに対して500億円だったと言われています。

渋谷公会堂や区役所なども、近隣のマンションと余った容積率を分け合って建替えました。

 

団塊の世代向けに建てた小学校も、少子化によってそこまでの規模は必要なくなりましたが、公共財産ですから土地を売るのではなく、容積率だけ売るというケースが子今後も増えて来るでしょう。

 

渋谷区の神南小学校は築60年で建て替え時期に来ていました。

そこで隣のマンションに容積率を移転して、隣のマンションは14階建てから34階建てのタワーマンションに、空中権を譲ってもらった見返りに、区は小学校の建て替え費用の一部と交換です。

 

銀杏並木の存続でもめている神宮外苑も、土地所有者である明治神宮などが余った容積率をデベロッパーに売って、ビルが建てられる計画です。

土地を売ると景観にも影響しますが、土地はそのままで、余った容積率を売るだけなので、規模は変わらないところがミソです。

駅近の公共施設は、これからも再開発で「狙われる」存在です。

 

渋谷の一等地に建つ現在の神南小学校

 

 

ビル内の大学に当たり前に

少子化で学校の存続や規模縮小、学生を惹きつける設備一新など、大学にも影響が及んでいます。

容積率の売買という手法だけでなく、国立大学では、土地を貸す「定期借地」の手法で、建て替えを開発業者持ちにする傾向があります。

 

国立大学のときは、土地は国のものでしたが、国立大学法人化によって、土地は国から国立大学法人に移転しました。

 

そのような経緯から、もし国立大学法人が土地を売った場合は、経費引き後50%を国に納めなければならないとされています。

いわば売却の税率が50%と同じ、半分しか手許に残らず、建て替えができなくなります。

 

そこで、売らないで借地(期限付きの定期借地)でデベロッパーに貸して、権利金と毎年の借地料をもらい、建て替えて一体開発するケースか増えています。

お茶の水大学の大塚キャンパスの一部をデベロッパーに貸して、マンション内にホールなどを入れてもらいます。同大学は、大山の寮跡地も70年の定期借地にして285戸のマンション用地で貸しています。

 

江東区越中島の東京医科歯科大学は、18000㎡の敷地を借地として貸します。

田町駅前の東京工業大学は23000㎡の敷地を75年定期借地で、建て替えた建物内の大学施設は無償取得のうえ、一時金50億円、土地の借地料は年間45億円です。

駅前なので、上階はマンションではなくホテルや商業施設の予定との事。

 

少子化によって、大学の統合が進みます。

すでに東京商船大学と東京水産大学が統合して東京海洋大学になりましたが、今後は東京医科歯科大学と東京工業大学が統合します。

 

統合すれば土地は余りますが、売ると50%国に持って行かれます。

したがって、国立大学跡地は、定期借地で再開発されることが多くなるでしょう。

マンションやホテル、商業施設が入ったビル内に大学がある、という風景は珍しくなくなるでしょう。

 

 


すまいる情報東京 代表取締役社長
公認不動産コンサルティングマスター
竹内 健二