老老相続による経済の停滞

ご高齢者同士の相続は、俗に老老相続と言われます。

遺産を相続する人のうち、還暦を迎えられた60歳以上の割合が2022年時点で50%を超えました。

80代、90代の親の遺産を60代、70代の子供が相続するケースが半数以上ということです。

 

80代、90代の親は、戦前戦中の厳しい時代を生きてきた経験から、無駄遣いをせず、消費額も少なく、いざという時のために貯蓄している傾向にあります。

いままで親のところで滞留していた資産が、老齢の子どものところに移転しても、もう欲しい物はあまりないし、旅行に行くにも体の具合が悪いし、ということでまたそこで滞留し、消費が伸びない、若い世代にお金が回ってこないことが懸念されています。

 

もっとも、この懸念は余りにも一般化しすぎていて、現預金や換金しやすい不動産だけをを相続する都市部の人の場合だけの話で、実際は売れない田舎の空家や土地、山林、別荘なども相続しなくてはならない方も多いはずです。

相続する方も「負動産」を持っていた場合は、親の「負動産」も加わって、孫世代が大変なことになります。

 

 

認認介護に老老相続が重なると

いずれにしても、この老老相続特有の問題点があります。

一番大きな問題は、親も子も認知症になるリスクが高まるということです。

 

長生き時代は「老老相続」「認認介護」時代に老々介護は、すでに一般的になりましたが、認知症患者が認知症患者を介護する「認認介護」は、老々介護の中で10%くらいあるのではないかと言われています。

 

意思能力がなくなると、資産は事実上凍結され、遺言も残せません。

相続発生時に、遺言の作成時の意思能力の有無が問題になることもあります。

もちろんその時に認知症だったことが判明すれば、その遺言は無効になります。

 

つまり、相続対策は、被相続人の意思能力がなくなってからでは手遅れなのです。

そして、それは、予兆もなく急にやってくることを覚悟しなければなりません。

 

老老相続の可能性がある子世代の方は、相続発生時に自分が認知症になっている可能性も含めて、元気なうちに対策をとっておきたいですね。

 

また親より先に亡くなってしまうケースもあるでしょう。

その場合は、子ども(親から見た孫)がいれば、孫が代襲相続しますが、独身の方で子どもがいない方はご高齢の親が相続人になりますから、その時親が認知症であれば、手続きは滞ることになります。

また、親の相続財産が増えることになり、相続税の問題も出て来るかもしれません。

 

親より子が先に亡くなった場合、もし親がその子に一定の財産を相続させる旨書いてあっても、その部分は無効になり、法定相続人で分けることになります。

普段から疎遠な法定相続人が遺産を手にしようとすること自体、こころよく思わない遺言者もいるでしょう。

ぜひ、相続させようと思っていた子の孫に引き継がせたいなら、遺言書に「代襲相続人に遺産を代襲相続させる」といった内容を書き加えるようにして下さい。

 

 

すまいる情報東京 代表取締役社長
公認不動産コンサルティングマスター
竹内 健二