税制改正大綱の表現から読む
先ごろ発表された自民公明税制改正大綱では、改正が噂されていた「暦年贈与の廃止や、現在相続時前3年間の贈与が相続時に加算されますが、その期間を長くすることなどについて「今後検討する」という内容で終わりました。
ただし文章には以下の表現が盛り込まれています。
① 諸外国の制度を参考にしつつ
② 相続税と贈与税を一体に課税
③ 資産移転時期の選択に中立的
諸外国の制度を参考に・・・
アメリカ、ドイツ、フランスなどの制度が想定されます
相続税と贈与税を一体に・・・
アメリカ、ドイツ、フランスは一体的、日本は暦年課税は、相続税と贈与税が大きく異なる(のを利用して節税をはかることが出来る)
資産移転時期・・・
アメリカは一生涯の贈与と相続で税負担は一定、ドイツ10年、フランス15年前の贈与まで相続と一体。
日本は、相続開始前3年間の贈与のみが相続財産に加算。
ただし相続時精算課税制度を選択した場合は、選択後は一体。
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「欧米並みに改正」を根拠とするなら、亡くなる前の贈与した期間を長くしたり、非課税枠は110万円の暦年贈与をやめて、相続時精算課税制度一本にする可能性が感じられます。
今回の「検討する」は、予告とも受け取れます。
もちろん増税につながりますので国の税収は増え、コロナで支出した分を取り戻す策にもなります。
生前贈与トラブル事例
生前に贈与した不動産が値上がりしたために、相続財産が0に
◇概要
相続人は、配偶者と子供2人の3人でした。
亡くなったご主人は、生前に評価額が2千万円の不動産を次男に贈与していました。
◇計算
相続財産は8千万円でしたが、2千万円を計算上相続財産に戻して1億円となりますので、次男の法定相続分は1/4ですから2千5百万円、生前贈与の2千万円を引いても5百万円は相続できると次男は思っていました。
◇値上がり
ところが生前贈与した不動産が4千万円の評価額に値上がりしていました。
そうなると計算は、生前贈与した分は2千万円ではなく4千万円となり、1億2千万円の1/4は3千万円、すでに次男は4千万円の贈与を受けているので相続分は残っていませんでした。
こんなときはどうなる?
①ルールを知らずに遺産分割を行った場合
次男に得で不公平でもその遺産分割協議は有効です。
②ルールを知っていても合意したら
生前贈与を考慮せず遺産分割に全員が合意すれば有効です。
③生前贈与を指摘するには 生前贈与は指摘する方が証明しなくてはなりません。
不動産や自社株、贈与申告した分などは登記簿や申告書などで事実が証明できますが、4年前以上前に現金で渡した分や証明が難しい財産は「もらっていない」と言えば証明困難で、揉め事になりやすいです。
トラブルを予防するには
生前贈与したら、遺言書を書くというセットでトラブル防止をしたいものです。
遺言などで意思表示をしておけば、生前贈与がある場合の遺産分割のルールと異なっても遺言が優先になります。
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