① 7月1日以降に夫婦間贈与した自宅は、遺産分割対象外に
バブル時代は、値上がりした自宅の売却益に対する税金を劇的に減らせる「3000万円の特別控除」を将来の売却時に活用するために、自宅を夫婦共有にすることが増えました。
夫婦共有ですと最大6000万円まで利益を相殺できるためです。
バブル崩壊し、長生き時代に。
今回の法改正は、遺産分割時に、できるだけ多く配偶者に残るように配慮したものです。
単純に配偶者の法定相続分を2分の1から3分の2にすれば良いのですが、反対意見も多く成立しませんでした。来年施行の配偶者居住権とともに、その「代替え策」と言えるでしょう。
生前贈与した分を、遺産分割の際に相続財産に加えて再計算することを「持ち戻し」と言いますが、改正前でも、遺言などに明記しておけば、持ち戻し再計算しないで、配偶者の取り分を多くすることは出来ました。
ただし、日本の相続では、遺言状がある比率は10%位と言われています。
9割が遺言状無しの相続という現状を鑑みて、遺言状なしでも、自宅の夫婦間贈与は持ち戻し再計算不要になったのかも知れません。
改正前に夫婦間贈与をしていて、配偶者の法定相続分を多くしたいという方は、是非遺言状でその旨を明記していただければと思います。
② 遺留分侵害額請求、遺留分は現金精算一本化に
例えば4000万円の不動産に対して、4分の1の遺留分減殺請求する場合、現行法のもとでは、4分の1の共有持分を取得することが原則でしたが、改正後は、1000万円の金銭請求に一本化されます。
名称も「遺留分侵害額請求」に変わりますが「額」という字の通り金銭の意味になります。
法定相続人であるのに、遺言で相続人から外された人は法定相続分の2分の1までは権利の請求ができました。
ただし今までは、不動産であれば共有持分を得るか、土地を分割して分けてもらうやり方が原則でした。
現実には、「持分などいらない」という相続人が現金を手にするには、膨大な手間と費用がかかりました。
それが、お金で請求する、という非常にシンプルな一段階になります。
現金が用意できないときは、他の相続人は借入を起こして支払う、というケースも出てくると予想されています。
③ お嫁さん、お婿さんが貢献した介護などの特別の寄与で遺産分け
改正前は、相続人ではない親族(例えば子の配偶者)が被相続人の介護や看病に尽くしても、相続財産を取得することはできませんでした。
今回の改正では、このような不公平を解消するために、無償で被相続人の介護や看病に貢献し、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたと認められる親族(特別寄与者)は、相続の開始後、相続人に対して特別寄与料を請求できることとする「特別の寄与」の制度が新たに設けられました。
ただし、相続人ではないので、遺産分割協議には参加できません。
今回の制度では、療養看護のみが寄与行為として明示されおり、さらに、「無償で」あることが加わっています。
被相続人の療養看護することによって訪問看護等のサービスを利用せずに済めば、そのサービス利用料を節約できるわけですから、被相続人の財産の維持について特別の寄与をしたといえるでしょう。
介護日誌をつけておくべきですね。
特別寄与料の額が決定すると、特別寄与料を被相続人から遺贈によって取得したものとみなして相続税が課税されます。
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