私は、自他共に認める「お年寄り好き」です。お話を聞くのは知らない世界の、別の人生を旅するようで、豊かで穏やかな気持ちになれます。
お年寄りと言っても役所定義の年齢ではなく、おおむね80歳くらいのイメージです。父は7年前に亡くなりましたが、今年89歳になる母は埼玉の実家で一人暮らしをしていて、おかげ様で健在です。
以前は一番大好きなお年寄りは自分の母でしたが、不動産の仕事を永年続けてきて、たくさんの方の人生の節目に立ち会って参りますと、お年寄りも赤ちゃんも、自他の区別が段々なくなってきました。仕事としての節度は守りつつ、ご縁があった方に幸せになってほしいと心でいつも念じています。
人は出会うべき時に出会える、という言葉通り、震災から3ヶ月くらい経った頃、自分史のプライベート出版をプロデュースしている方と知り合いました。自分史というと本人の回顧録が思い浮かびますが、この方の提供する自分史は「子供が親にインタビューして贈る」という点が出色だと思いました。
「へぇ、お母さんって、美容の仕事していたの・・・」とか、「お父さんは人助けして新聞に載ったこともあったの・・・」などと、子供の知らなかった親の姿が、どんどん出てくるそうです。
子供がインタビュアーなので、今更格好つけることもなく、素の姿が出てくるとのこと。
そこにあるのは、今まで知らなかった親を理解しようとする子と、一番近い肉親である子に理解されたい親の、魂の交流ではないかと思います。
母を見ていても、また、お客様とお話していても、いまさら人に何かして欲しいというお年寄りの方はほとんどいません。
今までの人生の道行きを理解し、いまの気持ちも理解できること、子供が作る親の自分史のお話を聞いて、これは我々不動産の仕事をする者にとっても、とても大切なことだ、と気付かされました。
震災によって、浦安は「有名税」なのか、マイナス報道がとても多かったです。その影響もあり、震災後に、エリア外から住宅を求める方は皆無に近い状況が続いています。
私共は、再び他の街から魅力を感じて住みたい、という方が増えるよう、まず地元から魅力を発信しようという意気込みで、今年もお役立ちを目指して行きます。
魅力ある街とは、年代層によってポイントは異なると思いますが、お年寄りが幸せな顔をしている街は、間違いなく良い街だと思います。
そこには世代を超えた理解と交流があるからです。
私も、母の自分史を、来年、母の卆寿の贈り物にしようと今から楽しみにしています。
竹内 健二