生前贈与で、相続の悩みを減らせることが出来たご相続に備えてのご相談がとても増えて来ました。

相続「税」の軽減の話でしたら、色々と対策が流布されていますが、相続「分配」については、正解はなく、ご家族ごとの事情や考え方、親子、兄弟の在り方によって千差万別なので悩みも多いのだと思います。

 

そんな時は、生前贈与を考えてみるのも一案です。

税金の額も大事な要素ですが、あげて良かった、もらって有難い、ということが本来の姿で、相続では亡くなった後の「神のみぞ知る」世界ですが、生前贈与でしたら、生きているうちに感情のやりとりができます。

 

夫婦間でしたら「2000万円の夫婦間贈与」という無税で出来る強力な制度がありますが、子供や孫へは住宅資金の贈与など、無税で出来る贈与は限られていますし、該当しない方も多く使い勝手がよくありません。

かと言って、110万円の非課税枠の範囲内だと、1000万円贈与するのに10年かかってしまう時間的な問題もあります。

 

そこで、メリットとデメリットを理解したうえで「相続時精算課税制度」を使って、生前贈与をご検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

相続時精算課税制度のあらまし

◆贈与税の非課税枠は110万円ですが、選択によって2500万円にできます。

◆60歳以上の親・祖父母→20歳以上(来年4月以降は18歳以上)の子・孫への贈与

◆現金だけでなく、不動産や株式でも可、資産の制限はなし

◆2500万円を超える贈与については一律20%の贈与税

◆贈与する人(父・母・祖父・祖母)ごとに110万円の基礎控除枠かこの制度か選べる

◆相続が発生したときに、相続財産と贈与財産を合算した相続税から、すでに支払った贈与税を差し引くことができる

 

 

●孫の教育費がかかる「今」こそタイミングだと贈与したYさん

Yさんの娘さんは離婚されて二人のお子さんを育てていました。

その二人とも進学期が重なって、まとまったお金が必要なときでした。

娘さんは自力でやるつもりでしたが、お子さんの進学分野が結構お金がかかるとのこと。

 

今が一番贈与が活きるタイミングと思ったYさんは毎年1000万円、3年間贈与することに決めました。

3年目は通算3000万円になり、非課税枠を500万円オーバーしますので、娘さんに100万円の贈与税を払うように言い伝えました。

Yさんはご主人を亡くされており、お子さんも娘さん一人っ子なので、相続の時にもめることもありませんでした。

 

●独身の娘に「収入を残す」ために賃貸マンションを贈与したKさん

Kさんには、50代のご長男と40代のご長女の二人のお子さんがいらっしゃいました。

ご長女の結婚についてはヤキモキする期間を通り過ぎ、ご長女も結婚する気がないということでした。

 

Kさんは、一人で生きて行くご長女の行く末を案じて、もし働けなくなった場合の事や、自分たちの世話をお願いしなくてはならなくなった時のことを考えて、所有する賃貸マンションを贈与することにしました。

年間200万円の賃貸収入があるマンションです。

 

ご長男はお嫁さんの実家の家業を継いでおり遠方で、常々妹であるご長女に負担をかけているのではと気にしていたとの事で、贈与に快く賛成してくれました。

 

賃貸マンションは売るとしたら4000万円以上になりますが、贈与の評価額では2500万円以下で、税金はかかりませんでした。

 

贈与しなかったら、賃貸収入はKさんの相続財産にどんどん加算されて行き、10年では2000万円も増えてしまいます。

贈与することで、賃貸収入はご長女のものになりますので、相続対策にもなりました。

何よりKさんが長生きするほど、相続財産「減らし」に貢献するので、その点でも良かった贈与でした。

(賃貸物件の贈与は、相続時の評価が変わる場合があります。)