Nさんから、ご自宅マンションの売却相談を受けました。

ご主人を亡くされて10年、二人のお子さんは世帯を持って遠方に暮らしていました。

事情をお伺いすると、今年に入ってから親しい友人を二人亡くしましたが、いずれも一人住まいで病状が急に悪くなってのことだったとのこと、

Nさんは何かあった時、お子さんたちに連絡しても、日帰りで来られる距離ではなく、ちょっと心細くなってケア付きの施設でも入ろうかと思ったとのことでした。

 

Nさんには、ケア付きの施設と言っても、色々な種類があって費用もまちまち、介護認定を受けていないと入れないところもあるというご説明をして、慌てずに、じっくり考えて行きましょうとお話しました。

 

住み替えて、現在の不安を解消できたとしても、また新たな不安や事情の変化は起こるものです。

大切なのは、これからの生活をイキイキ過ごすことであり、そのためには「本音」で好き嫌いをはっきりさせることが大事です。

 

特に気ままなマンション暮らしから、施設という集団生活に変わることは、Nさんのようにまだ健常な方には、制限が多いとストレスになってしまいがちです。

Nさんとは、毎月お茶のみ話の機会を設けて、好きなこと、趣味、お友達のこと、これからやりたいこと、お子さんとの関係、ご実家のこと、子供の頃の事、したくないこと、嫌なこと、など雑談の中でお聞きして行きました。

 

Nさんは、以前叔母が入っていた施設に行った時、それは老人ホームだったのですが、お部屋の狭さに息詰まる気持ちがしたとおっしゃいました。

介護が必要な方には必要十分な広さなのですが、健常な方だからそう思ったのでしょう。

Nさんは手芸の趣味があり、作品や道具が置けるアトリエ的なスペースが欲しいと、お話の中で出てきました。

子供の頃育った古い民家の居心地が好きで、内装も民家風が良いなど、いろいろと希望がイメージされてきました。

 

それから、人嫌いではないのですが、プライバシーに立ち入った世間話にはお付き合いするのが苦痛だとか、一人で本を読んだり音楽を聴くのが好きで全然孤独感を感じない、などという好き嫌いもだんだん出てきました。

 

 

楽しかったお茶のみ会も、そろそろ行き先の候補を探しましょう、という段階になりました。

そして、Nさんに神奈川にある「分譲型」のケアマンションはいかがでしょうか、と提案しました。

大前提として、看護師さんが常駐でクリニックもすぐ近くで提携していること、食事も頼める、共用施設が充実しているなどがありますが、まだ介護が必要でないNさんにとって、一番大事なことは、これからの生活を自分の好きなように生きることだと思ったからでした。

 

まず分譲なので自分の所有権があり、好きなリフォームが出来ること、広さは60㎡以上あること、内風呂やキッチンが室内にあり大浴場や食堂で、好きでない世間話や噂話に付き合わなくて済むことなどがNさんのライフスタイルに合っているように感じました。

 

そして何より、中古であれば数百万円からあることが、お金の心配もなく良いと思いました。

分譲だから資産になる、という不動産屋の宣伝文句は話半分としても、介護が必要になってから、その時は合った施設に移っても良いと割り切れる価格だったのが決断の後押しをしました。

 

あれから10年経ち、Nさんはまだまだお元気で暮らしていらっしゃいます。