子供が独立し、配偶者も亡くなり、いまは一人住まい。

長寿時代、老後資金は一般的に3千万円必要だとよく言われます。

今回は、「気持ちに添った」不動産の処分による老後資金づくりの実例をご紹介します。

老後資金の作り方については、ファイナンシャルプランナーや銀行、生命保険会社など、いろいろなところで展開されています。

貯蓄や運用などは、その道の専門家に譲るとして、不動産の処分による資金作りは、ほとんどのケースが、配偶者が亡くなって一人になったとか、健康を害して今の家では住みづらくなった、子供に呼ばれて同居する、老人施設に入ることにした、など人生の節目と重なっています。

したがって、不動産処分の事情があって「ついでに」老後資金も確保できれば・・・、という側面が強いものです。

人生の節目に遭遇した処分ですので、その気持ちに添うことが大事だと考えます。

ご相談を受けて、本音のところをクリアしながらお世話した事例です。

 

 

4LDKのうち、使っているのは1LDK分、かと言って掃除しない訳には行かず、体がきついという相談をいただいたのは、70代のKさんからでした。

お孫さんが小さい頃は、子供家族が泊まりに来ていたので、普段は空いている部屋も大活躍でしたが、孫が受験期に入ると訪ねてくることは稀に。

正月も海外旅行とかで来ないことも増えてきました。

幸い体は元気だったので、今のうちにコンパクトな家に転居しよう、最後は施設に入って、子供たちのお世話にはならないようにしようと、将来の入所費用のことも考えて、住み替えることを決めました。

 

住み替えに当たって一番大事にしたいことを伺いましたら、今から見知らぬ土地へ行って孤独な人生を送るのは嫌、友人が来やすい場所にしたい、とのことでした。

それから、本音では、「都落ち感」があると侘びしくなるので、同じエリアで小さい家に住みかえたり、普通の賃貸住宅に入るのは、何となく気が進まないという気持ちでした。

 

 

Kさんは一戸建てにお住まいでしが、終の棲家は鍵一本で暮らせるマンションを希望していました。

お友達は地元に多かったので、それを優先すると地元の小さなマンションということになりますが、なかなか条件に合った大きさや金額のマンションがなくて、一戸建てを売った資金と同じ金額のマンションになってしまって差額を蓄えに回すことができなかったり、広すぎたり、小さいものはバリアフリーでなくて暮らしにくそうだったりで、いい加減疲れてきました。

 

そこで、都内の1LDKのマンションをご提案してみました。

お友達と、ちょっとお茶でもという気軽さはなくなりますが、観劇や食事や買い物に一緒に行くような時は、Kさんのところが拠点になって集まるようになるかも知れないと思ったからです。

都落ち感もなく、結婚してからしばらく住んだことのある場所の近くを中心に探すことにしました。

言わば、人が集まりやすい場所に住む、という考えです。

 

Kさんも乗り気になって、都内マンションへの住み替えは成就しました。

概ね6千万円で売却し、4千万円のものに買い換えて、2000万円老後資金を残すという組み立てになりました。

足が遠のいていた孫たちも、時々様子見という口実で、ちゃっかりお小遣い狙いで寄ってくれたりするようになりました。

お友達も、時々泊まりに来て、そんな時はリビングに布団をのべて皆でおしゃべりしながら寝るのですが、それもまた女学生時代に戻ったようで楽しいとおっしゃいます。

お友達にしても、家を空ける良い口実になっているようです。

 

 

この事例のように、小さい家を購入して住みかえるほかに、次のような処分にまつわる方法があります。

 

① 自宅を売却して、シニア向きの賃貸に住み替える。

この方法は、手許資金が最大になるという点がメリットですが、長生きすると、ずっと家賃を払い続ける不安や、賃貸ですから自分の体調に合わせたリフォームが出来ないというデメリットがあります。

 

② 自宅を売却して、購入した人に賃料を払ってそのまま住み続ける。

リースバックという方法です。

引越の手間やストレスがなく、リフォームも出来るケースが多いです。

傍から見ても、そのまま住んでいますので売却したことが分からないというメリットがありますが、デメリットに関しては①と同様です。

 

③ 自宅の売却資金でアパート(またはアパート併用住宅)を購入し、自分もその一室に住む。

まとまった老後資金は出来ませんが、月々の家賃収入が生活費の足しになります。

現在の自宅の土地がアパートが建てられる地域でしたら、建て替えということも考えられます。

 

 

いずれにしましても、自分に合った新たな生活をすることが目的ですので、気持ちも十分納得できる方法が良いのです。

お金の計算だけで決めると、こんなはずではなかった、という後悔につながるおそれがあります。

私共を、本音が出せて、それを受け止め提案してくれる相談相手としてお声掛けをいただければ大変嬉しく全力で応援させていただきます。

せっかくですから、ご事情が許せば楽しみながら出来ればもっといいですね。