裁判所の司法統計によると、相続放棄の申述受理件数は、平成14年に14万件だったものが、平成26年には18万件、平成28年には21万件を超え、年々増え続けています。
「相続財産を放棄するなんてもったいない」というのは関係のない外野の言葉。実際は悩んだ末の決断が多いものです。
どんなケースのご相談があるのか実態をレポートします。ご自身にも当てはまりそうな方にとって、ご相談のキッカケになれば幸いです。
●兄弟仲が疎遠だったので不安
離婚した兄の子供たちが全員相続放棄して督促状が回ってきた
離婚をしたDさんの兄には子供が二人いました。
その兄が亡くなり、1年経ったころ、借金の督促状がDさんに来ました。
兄には子供がいるので、Dさんは相続人にならないはずなのに、と寝耳に水でした。
兄の子供たちが相続放棄をしたため、順番でお鉢が回ってきたことが分かりました。
Dさんは、相続放棄は亡くなって3ヶ月以内に申し立てなければならないと、何かの本で読んだ記憶があり、慌ててご相談に見えました。
死亡してからではなく、相続放棄を知ってから3ヶ月以内に申し立てれば、Dさんも放棄できるかもしれないので、司法書士を紹介し申立書をつくり、無事放棄できました。
●相続財産が「負」動産ばかり
地方の空き家で、解体費用や測量費が売れる価格を超えて持ち出し
Mさんが相続する予定の家は、いわゆる「負」動産でした。
誰も住まないので相続後に売って換金するにも、かかる経費のほうが多く、相続しないことにしました。
友人にこの話をしたら、友人は相続財産が古い借家で、家賃が極端に低く長期間滞納されている家で、やはり放棄したそうです。
●これ以上、財産管理に悩みたくない
老後の貴重な時間を「相続対策」ばかりに費やしたくない
60代のOさんから「自分たち夫婦の相続対策だけでも頭がいっぱいなのに、これ以上ややこしい相続財産などいらないので放棄したいがどうでしょう。」とご相談がありました。
遺産がもとで子供たちが間違った人生を歩んでしまう心配もありますが、何よりあれこれと相続対策に時間を取られるのが嫌だとおっしゃいました。
親の遺産は、ほとんどが不動産で、アパートを含めて、いろいろな場所に分散していました。
遺言書もなく、守らなければならない名跡もないので、Oさんは割り切れたそうです。
●遺言書の内容に納得できずに放棄
遺言書ではなく、協議による相続を他の相続人から拒否されて
Hさんから遺言書についてご相談がありました。
遺言書には〇〇の土地はHさんの兄に、△△の土地はHさんに相続させる、という文言がありました。
Hさんは△△の土地は利用度が低く管理にもお金がかかる土地なので欲しくないので、兄弟で遺言書によらず遺産分割協議による相続を提案しましたが、他の兄弟は遺言書の内容に異論はないのでと、同意を得られませんでした。
「相続させる」という文言は絶大です。
この言葉がある限り、相続人全員の同意がないと協議は認められませんので、結局遺言書が活かされて、他の遺産も放棄するのは、ちょっと惜しかったのですがHさんは放棄することにしました。
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