ニュースは、一番目立つ単位のデータを使う
相続税の評価額となる土地の路線価が発表され、銀座の鳩居堂前が、あの狂乱の平成バブル時の最高価格を超えて坪1億3千万円以上になりました。他の大都市でもリーマンショック前のミニバブル時を超えました。しかし、これは訪日観光客に関連する商業、宿泊施設が望める地域限定です。下の記事のように、都内3.2%上昇、という数字は、高騰した商業地域が多く存在するエリアの単位で平均化すれば、当然に上昇、ということになります。
また、新築マンションも都内は加熱していると、よく報道されますが、右側の記事のように「首都圏」とか「都心」というくくりで平均化されることが多いものです。傾向を示す記事としては良いのですが、自分が住み替えよう、投資しよう、とした場合は、平均化ではなく、具体的な地域とか利便性で選ぶ訳ですから、できるだけ色々な条件で細かく分析してみることが、失敗を少なくするポイントです。
どのレベルの「物差し」がいいのか
家余り、不動産市場成熟化、老齢化、少子化、というキーワードから導かれるのは「二極化」です。皆が家を求めていた高度成長時代であれば、家であれば都心から遠い公団でも、都心寄りでも、よく売れていました。
しかし家余り「二極化」の時代は、差がはっきりしてきます。たとえば東京であれば、首都圏→都内→どの区→どの駅→駅のどちら側、というように細分化して選べる時代になります。さまざまな「物差し」がある中で、首都圏の不動産の場合は、「駅からの距離」が非常にハッキリした価格の上下、需要の多寡に連動しているというデータがあります。
都心部、都南西部の場合、駅から徒歩5分と12分の成約単価の差は、ここ5年間で2倍くらいの差がついてしまいました。高齢化、少子化は、駅前需要につながる事、訪日観光客の増加などで、駅前商業が再開発されたことなど、要因は色々ありますが、駅○○分、というのが、とてもわかりやすい目安であることは間違いありません。
ただし、新浦安のような大規模開発のニュータウン地域は、駅前だけでなく、各居住区に商業や学校などを配置していますので、単純に駅からの距離だけでは測れない場合もあります。また、投資の人がたくさん買った結果一時的に値上がりしているのか、利便性が高くなる施設ができたから値上がりしているのか、住みやすい行政サービスが充実しているので値上がりしているのか、よく見極めて、終の棲み家や投資に臨んでいただきたいと思います。
老後資金も投資も、やはり安定した相場のところが安心
自分は売るつもりはないから、上がろうが下がろうが関係ない、売らないのに税金ばかり上がって却って迷惑、というお話も聞きます。しかし、売るつもりがないという「予定」は「未定」のことが多いものです。不況や戦乱など、変化が激しい世の中ですし、突然病気になったり、配偶者が亡くなるなど予測がつかないことも起こりうります。
老後資金が必要になった時は、売りやすく相場も安定しているほうが良いはずです。また、相場が上がるところは、家賃も上がるのが通例ですので、その家に住めなくなって人に貸して家賃収入を生活費の足しにしようと思ったら、相場は上がるにこしたことはありません。(もちろん相続税の納税資金を準備するという別の側面はありますが。)
それから、今後は不動産の金融化が進みますので、たとえば、そのまま住みながら老後資金を金融機関から出してもらう、相続の時に精算するリバースモゲージなども増えてくるでしょう。その時、老後資金をいくら貸してもらえるか、担保価値によって変わってきます。その意味でも、売るつもりがなくても担保価値は高いほうが、いろいろな選択肢が増えます。
これからも、いろいろなニュースが出てくると思いますが、平均化された「物差し」ではなく、お一人お一人の事情に合った「物差し」でご判断いただき、私共専門家の意見も参考にしていただければと思います。荷物を減らしたり、身の回りを整理する「終活」なども、転居先を小さい部屋にできる、施設にすぐ入れる等、いざというときの選択肢を増やせる手段ですから、当社でもノウハウを集めて行きたいと思います。
すまいる情報東京 代表取締役社長
竹内 健二