相続で増え続ける「住み手のいない」空家
空き家は近年増加傾向にあり、全国に820万戸もあると言われています。治安や景観の悪化、災害時の倒壊などが大きな社会問題となっており、その対策が急がれています。平成28年度税制改正で新たに設けられました「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」を今回は取り上げます。空き家については、各自治体が条例を制定するなどして対応してきましたが、平成27年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」は、相続によって空き家となってしまった家屋等を売却しやすくするために制定されたと考えることもできます。先日、当社でもこの件のご相談があり、制度ができて1年、ようやく周知されてきたのかと思います。
相続人が受け取れる現金が1000万円多くなる
ご相談の方をAさんとします。Aさんのご実家は都下にあり、お母様が昨年亡くなる直前までお1人で暮らしていました。お父様はすでに亡くなっており、その時にお母様が家を相続されていました。
Aさんは、兄弟が一人いますが、だれもその家には住みません。築後40年以上経ち、住むには多額の改修費がかかることもありますが、すでに自分たちの家はあり、住み心地にも満足しているので、敢えて転居する理由がないためです。
よくある話ですが、こういう場合は「とりあえず」相続人の名義に登記だけして、放置されるケースが多いのです。それが空家の増加につながって行きます。Aさんは「とりあえず」相続した家を兄弟で1/2ずつ所有することにし、あとはゆっくり考えようということにしました。相続財産の共有は、普段は私はお勧めしませんが、こればかりは功を奏しました。
相続した家は、売ると税金がかかるケースが多い
ご実家に長年親御さんが住んでいた場合、たとえば40~50年前に土地を買って家を建てた、というようなケースですと、当時は畑の真ん中でとても安かったり、契約書が散逸していて買った価格がわからない、ということが多いものです。
買った価格がわからない場合は、税金の計算上は、その家を売った価格の5%の価格で買ったものとして計算します。Aさんの相続した家(土地)は、売る場合の想定価格は6000万円ほど、その5%の300万円で買ったことになり、差引き5700万円の売却益がでることになります。仲介手数料や建物解体費などの諸経費を引いても5000万円は利益になり、税金は20.315%の1015万円にもなります。相続人は兄弟二人ですから、一人当たり500万円の税金が手取り額から減ります。
1000万円の税金が0に
「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」には、いろいろと摘要条件がありますが、Aさんの状況を顧問税理士に相談してみると、特別控除が利用できるということが分かりました。さらに、相続人一人一人に3000万円までの利益控除ができるので、今回一人当たり2500万円の利益はすべて控除され利益がないものとして扱われ、結果として売却にかかる税金は0になります(国民健康保険税等は翌年のみ上がる)。
所有者がお亡くなりになった後、他人に貸していたりするとダメです。誰も住まないのなら、固定資産税もかかるし、家も痛むから、安くてもいいからしばらく貸しておくか、と思っていたAさんは、その考えを取りやめました。
この制度は、相続日から起算して3年を経過する年の12月31日までに譲渡することとなっています。平成31年12月31日が譲渡の期限です。「とりあえず」相続だけして放置している空家がありましたら、制度が使えるかどうか一度調べてみることをお勧めします。また、今年以降、再来年までに相続することがありましたら、この記事を思い出していただき、ざっくばらんにご相談いただければと存じます。
そのことをご理解いただいたうえで、アパートに建て直して所有し続けるのが良いか、場所によってはリフォームして民泊用に貸すのが良いのか、比較検討されることを望んでおります。
株式会社すまいる情報東京
代表取締役社長 竹内 健二
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