年間420億円、受け取り手がいなくて国が「相続」

日本経済新聞2017年4月16日より引用

未婚や寡婦、兄弟姉妹がいない高齢者、いても兄弟姉妹が皆亡くなっていて、甥や姪もいない、このような相続人がおらず、相続財産の受け取り手が無いケースが増えています(4月16日付日経新聞)。記事によると、この10年で、その額は2.5倍に増えているとのことです。

生涯未婚率は、男性23%、女性14%で記録を更新中、ますます増える勢いです。少子化の流れの中、今後は結婚していてもお子さんのいらっしゃらないご家庭や、ひとりっ子の ご家庭も多く、相続人がいない、という現象は増加傾向となるでしょう。

相続人がいないとどうなる?

相続人がいない場合は、裁判所から選任された相続財産管理人として弁護士が、不動産の処分などをして現金化し、国に納める手続きになります。また、銀行などで10年以上放置された「休眠預金」は、昨年法改正され公益活動をする団体などに助成する活用法が出来ました。

当社でも、年に数件、弁護士が相続財産管理人となった売買物件を扱うことがあります。通常は、不動産の売買は、家族の為とか、苦境を乗り超えるため、とか、人の息吹を感じるものですが、この相続人がいないがための売買は、処分の為の処分、という感じで事務的に進むことが多く、故人が生前に、何か生きた証に不動産の活用が出来なかっただろうか、と考えてしまうこともあります。

誰に相続させるか、させたくないか、これから鮮明に

非婚率の上昇、出生率の低下は、相続人の減少につながります。配偶者や、お子さんがいらっしゃらない場合は、兄弟姉妹、亡くなっていれば甥や姪などが相続人になりますが、私共で受けるご相談で、意外に多いのは、何十年も会っておらず、生活を共にしたり、介護などのサポートも受けたこともない、「顔の見えない」甥や姪に相続財産を渡したくない、というものです。別に敵対しているわけでもありませんが、敢えて財産を上げなくてもいいだろう、というニュアンスです。

恐らく、財産をもらっても、特に感謝されることもないだろう、という「虚しさ」が根底にあるのだろうと、推測します。国庫にも入れたくない、顔も知らない遠い親族にもあげたくない、という悩みを持つ方が、今後増えて来ると思います。

さらに、認知症の心配と重なると

当社での相談例でみますと、相続人がいない、いても遠い親族でお願したり頼ったりする間柄ではないケースで、ご本人が恐れることは、最近物忘れが激しい、このまま認知症になってしまったら、どうするんだろう、という漠然としたご不安をお持ちの方が多いようです。

もちろん、現在でも信託銀行に遺言の執行を委ねる「遺言信託」や、成年後見人制度などがありますが、これはどちらかと言うと「守り」の策です。何かを積極的に支援する、財産を有効に活かす、という趣旨は薄いためです。一方、「攻め」の策として、10 年前に新たに施行された民事信託が最近注目を浴びて来ている様子です。

私が不動産取引で幸せを感じる時

民事信託は被相続人が今まで築き上げてきた財産について、自分の死後にその利用方法を予め決めておくことができます。財産の自由な分配方法などを決めるのは遺言書があり
ますが、遺言では自分の財産を誰に渡すかを決めることはできますが、財産を貰った相続人が、その財産を次に誰に渡すかまで決めることはできません。

また、成年後見制度でも、本人の家族の利益のために財産を処分することなどもできませんでしたので、従来の制度では実現できなかった、自分が生きている間に、自由な財産
管理が可能になります。当社も、仲間の司法書士や弁護士と一緒に、ご相談対応の幅を広げるために勉強中です。
いずれにしましても、不動産の現場にいて感じるのは、相続させる方も、相続を受ける方も、感謝が根底にあると、とても良い取引になる実感です。感謝に基づいた不動産取引が少しでも増えるよう、私共も精進して参ります。

 


株式会社すまいる情報東京
代表取締役社長 竹内 健二