タダで使わせる=使用貸借
使用貸借とは、無償で借りて使うことです。
日常生活の様々な場面で「タダで使っていいよ」ということはあります。
親の車だったり、投資用に買ったマンションだったりです。
不動産の場合は、賃料や権利金、礼金、一時金などを払わずに使うことが使用貸借にあたります。
親族間では珍しいことではありません。
贈与税には、お金や物品をタダであげることだけでなく、相手に経済的利益を与える行為も贈与とみなす規定があります。
他人に貸せば10万円の家賃がとれるマンションを、子どもにタダで使わせるのは贈与になるのではないかと増段を受けます。
民法では、無償で他人の物を使用収益する契約を「使用貸借」と定めていますが、国税庁では使用貸借にかかる権利を0円とする取り扱いになっています。
タダで使用している人の経済的利益が0円であれば、贈与税は発生しないことになります。
とは言え、他の税メリットも無し
タダて使わせてもらうことに対して贈与税の心配はありませんが、持ち主側の、他の税金メリットもありません。
なにせ0円なのですから。
他人に有償で貸していた場合は、賃料収入から固定資産税や管理費、減価償却費などを差引き、計算上赤字になれば、他の所得と損益通算でき所得税、住民税が減額になりますが、経済的価値が0円なので、収入0で経費だけ赤字にして申告することはできません。
また、相続時には、他人に貸していると家屋は貸家として2~3割評価減になったり、一定規模以内の土地であれば事業用地として50%評価減にできる特例も使えません。
もちろん自宅ではありませんので、自宅の評価減も使えず、評価額そのものとして計算されます。
謝礼程度の少額賃料の場合は?
普通に貸せば月3万円程度の地代がとれる土地を従弟に貸して、タダでも良かったけれど従弟が気を遣うだろうからと、月5千円の地代をもらって賃貸の赤字申告をした裁判例があり、判決は「使用貸借」だから赤字申告は認めないというものでした。(平成23年東京地裁)
固定資産税が年10万円、賃料が年6万円では、初めから事業として貸す意図はなく、謝礼金程度とみなされました。
経費と同程度の賃料では賃貸事業とみなされないという訳です。
反対側から見れば、タダで使っている子どもが固定資産税を負担しても、実費負担だから使用貸借に変わりはないと言えます。
やってはいけない仮装賃貸
以前、ワンルーム販売業者が、地方の資産家に都内のマンションを売りつけるときに、実際は資産家の子女が東京の大学に行くための住まい(使用貸借)にしているにも関わらず、実態のない賃貸借契約書を作って、節税になるからとマンションを売って摘発された事件がありました。
資産家のほうも、言われるままにやっただけだと抗弁しましたが、認めてもらえるはずもなく、節税した分を修正申告で取られ、さらに意図的な脱税ということで重加算税までとられました。
娘夫婦にタダで住まわせていて、結婚して苗字も違うし、賃貸借契約書だけ作って、実際はもらっていない賃料で確定申告、還付を受けたりすると大変なことになりますから、是非お気をつけ下さい。
土地を貸す場合は特に注意を
息子や娘夫婦に自分の土地を貸して、子どもたちが自分で家を建てる場合、地代をとると借地権が発生します。
当初はタダで使わせていたのに、相続の問題が近づいてくると、急に地代を取って「借地」にしようとする方がいます。借地だと土地の評価が半分以下になるためです。
判例では、急に地代をとって借地権が発生したことは認められましたが、借地権の設定対価(通常は更地価格の6割位)を払わずに無償で借地権をもらったということで、贈与税がとられました。(平成26年新潟地裁)
使用貸借で節税は無理と言うことですね。
すまいる情報東京 代表取締役社長
公認不動産コンサルティングマスター
竹内 健二
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