相続財産の分け方として、教科書には次のように書いてあります。
A・誰かが相続財産を引き継いで、他の相続人にはお金で清算するという方法【代償分割】
B・相続財産を売却してお金に換えて分ける方法【換価分割】
C・相続人で共有にする方法【共有】
D・現実に不動産なら分筆する、モノを分けるという方法【現物分割】
これらの方法のどれか、または財産の種類によって組み合わせます。
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問題は、現実的には教科書通りに行かないところです。
A【代償分割】の場合の問題点
自宅を同居していた長男が相続したい場合、他の相続人には法定相続分、例えば相続人が兄弟3人として、自宅が6千万円の評価として、預金が4千万円ないとしたら、足りない分を長男は用意しなくてはならず、このお金が用意できないことが多いのです。
B【換価分割】の場合の問題点
これが分け方としては一番スッキリするのですが、現実には、農地や山林、買い手のいない田舎の家、草ぼうぼうの別荘地などの不(負)動産、権利関係が複雑な賃貸ビル、契約書のない借地など、難しい不動産があるケースです。
売れない場合、誰かが引き継がなくてはならず、まとまりにくいのです。
また、自宅や先祖から引き継いだ土地を換金化するなどのケースでは、相続人の立場によって気持ちに温度差が出てきます。
亡くなったご主人と結婚してから買った家なら、奥さんも一緒に築いた資産ですから売るのに抵抗は少ないですが、ご主人の実家に嫁入りした場合は、ご主人の親戚の手前、売るのに抵抗感が出てきます。
また、亡くなった親御さんと同居していたり、看取ったお子さんは、遠方にいた兄弟より自宅への愛着が強いものです。
自分では住む訳ではなく、いずれは処分しなくてはならないのですが、思い出も断ち切ってしまうような気がして、納得に時間がかかり、早く現金で分けて欲しい他の兄弟と意見がぶつかりやすいものです。
C【共有】の場合の問題点
これはよく言われているように、共有にしても管理責任も共有になり、共有持ち分があるだけで、将来売るにも、アパートを建てるにも、建築資金を借りるにも、すべて全員の同意と手続きが必要になるので、できるだけ避けたほうが良い方法です。
さらに、共有期間が長くなると、共有者に相続が起こったときに、ネズミ算式に共有者がどんどん増えて行きます。三代で共有者が30人以上になった例もあります。
これから相続登記が義務づけられてきますので放置できなくなります。
共有者が30人になってから処分するなど、労力を考えたら気が遠くなります。
特に(負)動産の場合、共有になりやすいので、自分の子供には残したくないという方も多く、共有に異議を唱える相続人が出てきてまとまりません。
D【現物分割】の場合の問題点
きれいに等分に分割できる土地などめったにありませんし、現預金と不動産で評価額は同じだとしても、不動産は、管理コストもかかり、将来売った時の税金など考えたら、現金や上場株などをもらったほうがいいという相続人が多く、まとまりません。
特別【借入金・連帯保証】の問題点
相続対策で、あえて借入金を使ってアパートを建てたケースに多くみられるのが「借金の相続」です。
借金に関しては、相続人が勝手に決めた遺産分割協議は、貸した方には通用しません。
遺産分割協議でどのように借金を分けても法定相続分で借金を相続したことになります。
もちろん銀行が承諾すれば、特定の人だけ借金を相続できますが、銀行と話し合いが必要です。
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不動産の相続が一番問題になることが多く、分けても不満が残るケースが多くあります。
「相続するなら現金か都心のマンション」ということを言うお子さんもいますが、虫の良い望みという訳ではなく、兄弟間の話し合いと不和、相続で引き継いだ後の手間など、大切な時間をかけた割に、得たものが少なく失うものが多いことに対する不安が、そう言わせているのだと思います。
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