●不要な不動産を国が引き取る?
今年4月に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が可決しました。
実際の運用は2年以内に開始するとなっていますので、再来年までには始まる見込みです。
法律の字面だけ見ると、相続した不要な土地を国が引き取ってくれるイメージですが、国が引き取ってくれる条件が、相当に厳しくて該当する土地は1%に満たないのではないかという声もあります。
また、この法律は、セットで相続登記の義務化が謳われていますので、斜めに見れば、登記の義務化が本題のように思えます。
●相続登記させるための人参?
山林や田畑、使いようもない土地など、売ることも貸すこともできない、管理にお金ばかりかかる「負動産」を相続せざるを得なくて、登記もお金がかかるので放置しているケースは大変多いと思います。
そのうち何代も相続が起こって、相続人が何十人にも枝分かれしてしまい、所有者が誰なのか分からなくなっていることが大変な問題となっています。
そこで、現在は違法ではないですが、今後は相続登記をしないと罰則を設けて義務化することになりました。
その見返りと言っては語弊がありますが、国に引き取って欲しい場合は、審査の後引き取ってもらえる制度を創りました。
●売れる土地でないと無理?
ただし、国に引き取ってもらうための条件がとても厳しく、不動産会社の私共から言わせて頂くと「売れる物件」でないと引き取ってもらえないように思えます。
つまり、買い手のいないような物件は端から無理で、また売れる状態にするのに、大変な費用がかかりそうだということです。
「売れる物件なら、わざわざ面倒な手続きをして引き取ってもらう必要はないではないか」
「売れない物件だから引き取ってもらいたいのに」という声が聞こえてきそうです。
●引き取ってもらうための主な条件とかかる費用とは?
①更地のみ
マンションは対象外、空き家付きもだめなので解体費がかかります。
②抵当権がついていない土地
抵当権がついていたら返済しなくてはなりません。
③土壌汚染・地中物がない土地
調査費用、証明書代がかかります。
④境界が明確な土地
測量して回りの地主に立ち会ってもらい境界を入れる費用がかかります。
⑤崖がある土地
造成費用がかかります。
⑥工作物や樹木がない土地
伐採費用、廃棄費用がかかります。
⑦管理に手間と費用がかからない
など、不動産屋的には、一般の売れる土地の条件そのものです。
その他、国に10年分の管理費用を納めるなど、タダで引き取ってもらえることからはほど遠く、引き取ってもらえるとしても、数百万円以上費用がかかる土地も多いと思われます。
放置されているのは、山林とか過疎地の空き家が多いのが現実ですので、利用者は1%以下と言われる所以です。
●これからは相続放棄が増える?
相続財産の中に、山林や過疎地の空き家がある場合、相続登記しないと罰則があるため登記せざるを得ない、その物件は不要だけれども売れも貸せもせず、国にも引き取ってもらえない、そうなると他の財産があっても面倒を背負い込みたくないために相続放棄が増えるという予想もあります。
相続放棄をしても管理責任だけは残る、という八方ふさがりな時期が間もなくやってきます。
当社でも司法書士と共同で勉強して、何らかのお役立ちができるよう臨んで行きます。
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